聞き屋のたぬ吉

矛盾の総和が人生だ

存在を証明した文学フリマ東京

文学フリマを終えてしばらく気の抜けた生活を送っていました。いわゆる燃え尽き症候群というやつでしょうか。少しずつ回復してきたので、このあたりでブログを更新してみます。

 

僕は昨年の春、以下のようなことをブログに綴りました。

 

コミュニケーション不全の自分には居場所を作るような器量もないし、呼び掛けるような人脈もない。しかし、自分一人でも何かをしたいという思いは常にあって、じゃあ一体何が出来るんだろうって考えたら、自ずと答えは決まっていた。そう、それは小説に代表されるような創作による文章を書くということだった。

(中略)

直近の目標は文学フリマに出展して、自身の作品を頒布することだ。次回開催の11月までに間に合うかはわからないけれど、決意表明でもしない限りなかなか実行に移せない性格なので、まずはブログに書き出すことで自分に対してせっついておく。

きっと僕にとって文章の世界こそが居場所であり、自分の存在を証明する唯一無二の方法なのだ。

 

tanukichi.hatenadiary.com

 

 

あれから1年半、ずいぶん時間がかかってしまったけれど、今回ようやく目標だった文学フリマで小説を頒布することができました。本の製作自体まったくの未経験だったのですが、初めてにしてはまぁまぁの出来だったんじゃないかなと思います。

 

結果はというと、合計29冊売ることができました。こんなに刷っておいて1冊も売れなかったらどうしよう……と当日まで不安でしたが、それもひとまずは杞憂に終わりましたw

 

初出展でこの数字は多いのか少ないのか分かりませんが、さすがに今年流行りのタピオカが題材とあって「タピオカ禁止法だってw」と笑いながら通りすぎる人や、立ち止まって手に取ってくれる人がたくさんいて、何だかとても嬉しかったです。むしろSNS全盛のこの時代にそれらをいっさい使わず、ほとんど事前の宣伝ナシでここまで売れたのは本当に奇跡としか言いようがありません。

 

たぶんほとんどの人が、長岡さんが担当してくださった表紙のイラストに惹かれて買ってくれたのだと思います。タイトル負けしないようにと、時間をかけてとてもキャッチーに描いてくださって、その仕上がりを見たときは純粋に感動しました。町田駅デニーズで何時間も打ち合わせした甲斐がありました。

 

実はこのイラスト、ちょっとした意匠が凝らされていて、全体がタピオカミルクティーとして見えるように設計されているんです。そう言われると、タピオカを持っている人たちの顔そのものが底に沈んだタピオカに見えてきませんか?^^


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ふと、あのミルクティーの底に沈んだ大量の黒いタピオカを想像してみる。仮にあのひと粒ひと粒を人間として見立ててみると、「青春」とか「一人じゃない」という言葉の意味が急に生々しく、たいそうグロテスクに思えてきた。

 

小説の中に上のような文章が出てくるんですが、長岡さんはこの一文をもとに今回の表紙のイメージが浮かんだのだそうです。

 

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開催時間は11時~17時だったのですが、本当にあっという間の6時間でした。単純計算で1時間あたり5冊、約12分に1冊売れていたことになりますね。目の前のお客さんに直接自分の書いた小説を売り込むのはめちゃくちゃ楽しかったですw

 

本はB6サイズで、こんな感じに仕上がりました。一太郎だと縦書きで傍点やフリガナが振れたりするので、ブログで読むのとはまた違った味わいがあります。


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のっぺらぼうの感じが朝井リョウの「何者」の表紙に似てますね、と何人かに言われて、調べてみたらそういえばたしかに似てるなぁと思いました。

 

「何者」は文庫版でしか読んだことなかったので、これには笑ってしまったw

 

何者

何者

 

 

 

中身はこんな感じです

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加筆した序文w


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当日、会場には9時半ごろに到着しました


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開場前の中の様子


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アナさんが一緒に来てくれました^^


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本会場とは別に見本品を展示するスペースが設けられていたので、僕の小説も軽く説明文を貼り付けて置かせてもらいました。そしたら「ディスタピア小説」という謳い文句につられて買いに来たというお客さんがいて、世の中言ったもん勝ちだなぁと思いましたw

 

 

閲覧用のアカウントからハッシュタグを検索してみると、僕の小説の画像を戦利品としてアップしてくれている人がいました。お買い上げありがとうございます^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小説の感想ツイートなんかも見つけました^^

 

 

 

 

 

 

今回は純文学のカテゴリーで出展したのですが、なんと僕のななめ後ろのブースには「奇妙出版」というプロの作家の人たちのサークルが出展していて、芥川賞作家の滝口悠生さんや町屋良平さんなどがしれっと座っていました。しかも僕の大好きな小説「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」の著者である鴻池留衣さんも遊びに来ていたりして、とてもよい刺激を受けました。

 

当たり前ですがお客さんもひっきりなしに訪れていて、やっぱりプロの人たちは同人誌の人気もすごかったです。なお、とくに交流などはありませんでしたw

 

右上の画像に、ぼくの背中が写り込んでいました汗

 

 

これw


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今回執筆した「タピオカ禁止法」ですが、最初に構想が浮かんだきっかけはタピオカの海外名称「バブルティー」と日本の八〇年代後半に起こった「バブル景気」が不思議と重なって見えたことでした。

 

どちらも「こんなことは長くは続かないだろう」と薄々気付きながらも、その熱狂の渦に人々が巻き込まれていく構図がとても滑稽に見えたんですね。そこから実際に自分もタピオカ屋に並んでみたり、過去のバブル景気について本で調べたりしました。

 

ただ盛り上がっている様子をそのまま風刺するのではつまらないので、一見すると冷静に観察しているつもりの傍観者(小説の中でいう主人公の滝岡)も意識の底ではしっかりブームに巻き込まれているというありがちな現実を描いてみました。タピオカ屋の行列を横目に「あれ来年ぜってーなくなってるからw」と笑う男の人たちの会話を耳にするにつけ、そうした流行りに対する男女の意識の違いみたいなものはいつの時代もあるんだなぁ、と、いろいろと勉強になりました。

 

ギャグをふんだんに盛り込んだことで、僕の中ではかなりエンタメ要素の強い小説になったんじゃないかなぁと自負しているんですが、読み手のみなさんの反応はどうでしょうか。もちろん内容の受け取り方は千差万別だと思います。中には途中のグロテスクなシーンについていけないという声もあるでしょう。事実、ある女性が小説を手にとっているとき、女子大生が殺されるページで手が止まり、困惑気味にそっ閉じ……ということがありました。

 

分からなくもないです。むしろそういった反応が普通なのかもしれません。ですが、僕の小説は最初から万人受けするとはまったく思っていないので、そういう意味でのショックはありませんでした。むしろ純文学というのは可能な限り客観性を排除して、その人にしか見えない世界をいかにパーソナルに掘り下げていくかが重要だと思っているので、読みやすさや分かりやすさに重きを置かない、という点において、一定数の読み手が置き去りになってしまうのは致し方ないことなのです。

 

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そんなわけで、僕はもうすでに次の小説を書き始めていたりします。引き続きテイストは暗めですが、今回のタピオカよりはもう少し読みごたえのある内容になると思いますので、懲りずにまた読んでいただけると幸いです。

 

いつか作家としてデビューすることができたら、マジメで読書好きの彼に、僕の小説を読んでもらいたいです。それまでは頑張って書き続けます^^

 

 

そうこれからだろう 願い事が

ハローアゲイン 久しぶりに会えたね

そう諦めないで 答えはまだ誰も知らない

360度 無重力

これ以上にない 昨日以上の明日へ

いつでも僕らは 負けて泣いてばかりだよ

何度も立ち上がって叫んで

どうせなら勝って泣いて笑って

Yume Be The Light 

CTS「Yume Be The Light」2014年)