聞き屋のたぬ吉

相席をした彼の名は悲しみ

虹色の優しさに包まれた、東京レインボープライド2018

ゴールデンウィーク最終日の6日、ヤシュウさんとりきまるさんとAIR-J'さんと共に東京レインボープライドに行ってきた。


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結論から言ってしまうと、とても賑やかで楽しかったはずなのに、返って僕は自分自身を見失ってしまったような気がした。このイベントを心の底から楽しめるようになるには、もう少し時間がかかるみたいだ。

 

誰かがブログに書いていた。TRP2018に参加したことで、こんなにたくさんの当事者がいることを知り、自分は一人じゃないということが再認識できた、と。もちろん僕もパレードに参加している間はそれに近いものを感じていたし、あらゆるものが虹色に染まったプレイフルな渋谷の街並みは、マイノリティの僕たちをたくさんの優しさで包んでくれた。この初めて味わう独特の高揚感は、決してチープなものではないと思った。

 

あのとき確かに僕はパレードに参加していた。しかし、同時に僕は渋谷の街にいるようで、心はどこか全く違う遠い場所にあった。溢れ返るほどの群衆の中で一人、圧倒的な孤独にさらされていた。

 

誰かといるときに感じる孤独は、一人でいるときに感じるそれとは異質なものだ。孤立、と言ったほうが正しいだろうか。そんな僕の心情とリンクするかのように、孤独の感じ方について、エゾマルさんがタイムリーに記事を更新してくれていた。

 

ezomaru.hatenadiary.jp

 

結局、「孤独」が嫌いなんだと気づく。

人といると「孤独」を感じるから、だから1人でいるなんて、ちょっと皮肉だねw

 

この文章には本当に共感しかなかった。

前にも違う人の記事で似たような考え方に触れてはいたものの、人との繋がりなんて所詮はそんなものだよなぁと、改めて認識させられた。やはりこんなふうに思う人はいるんだよなと、心強く感じたのだった。

 

 *   *

 

パレードがラフォーレ原宿の手前にさしかかったとき、ゆくりなくも沿道にある人物を見つけてしまった。その昔、定期的に乱暴なセックスをしてもらっていた男の人だった。背が高いからやはり目立ったが、彼がこちらに気付くことはなく、彼氏なのか友達なのかわからない連れと一緒に、僕らに向かってレインボーフラッグを振っていた。笑っているのにどこか冷めたような表情は、最後に会った五年前と何も変わってはいなかった。

僕は何事もなかったように歩き続けた。途中何度か息が上がりそうになるのをごまかしながら、何とか会場まで戻った。入り口で多くの人たちが「お帰りなさい」と書いた紙を持って待っていてくれて、パレードを歩ききった達成感で胸がいっぱいになった。

 

りきまるさんたちはステージを見に行くと言うので、ヤシュウさんとAIR-J'さんと三人で木陰で休むことにした。ヤシュウさんがわざわざレジャーシートを持ってきてくれたお陰で、のんびり過ごすことができた。

 

その後ステージが終わったので、合流するために場所を移動することになった。歩いているときに変な動悸がしていて、いやいや気のせいだと思いながら二人の後についていったんだけれど、歩道橋を上がりきったあたりで息が切れ、しゃがんで呼吸を整えようとしたけれどダメでその場にへたり込んでしまった。苦しくてどうしようもなくなって、ついに過呼吸が始まってしまった。

こんなところまで来て、一体何をやっているんだろう……。自分の精神的な弱さに心底うんざりした。顔が痺れてひきつっているのを隠そうとしたけれど、手足も痺れてうまく言うことを聞いてくれない。一瞬目を開けると、目の前にひどく困った表情のヤシュウさんがしゃがんでいるのが見えた。AIR-J'さんは僕の呼吸が整うまで、優しく背中を擦ってくれていた。せっかくの楽しい時間を台無しにしてしまって、本当に申し訳ない気持ちになった。

 

ようやく落ち着いて立ち上がると、りきまるさんたちとは合流せずに解散することになった。原宿駅へ向かう途中、二人の背中を見つめながら、あんな醜態を晒したことで嫌われてしまったのではないかと怖くなった。しかしそんなことは聞けるわけもなく、聞いたところで本当のことなんて答えてくれるはずもないのだった。

そんなことを悶々と考えながら次の目的地へ向かった。ヤシュウさんはひどく疲れていたようで、途中の品川駅でお別れをした。

 

文学フリマの帰りに羽田空港まで行き、カフェでAIR-J'さんと趣味のこと、ブログのこと、恋愛のことなどいろいろ語り合った。そのあと空港の展望デッキへ上り、二人で強風に吹かれながらぼんやりと滑走路を眺めた。

 

飛行機のゴォーという離陸音が耳をつんざく。情緒的な景色に酔いしれながら、管制塔からは全体がどんなふうに見えるのだろうと、ふと想像した。

 

空を見上げていると、AIR-J'さんが「明日は雨が降るらしいよ」と教えてくれた。完全に暮れる前の鈍色の曇天は水彩画みたいで、ところどころ灰色の濃淡でレイヤーになっていた。

まるで僕の心を、映し出しているようだった。

 

 

(YUKIフラッグを立てろ」2017年)