聞き屋のたぬ吉

矛盾の総和が人生だ

【大前粟生】やさしさで胸が張り裂ける「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

僕はときどきタイトルや表紙だけを見て小説を購入することがある。 たとえば筒井康隆の「旅のラゴス」は完全にジャケ買いだった。この表紙を見ただけでものすごくワクワクした気分になって、旅への憧れが止まらなくなってしまうのだ。 旅のラゴス (新潮文庫)…

【小説】女の顔は請求書

今しかない。そう思い立った二週間後、私はついにクリニックの一室で担当医と向かい合っていた。 デスクに比して少し大きめのPCモニターが目の前にあり、そこには360度どの角度にも自在に動かすことのできる私の顔面が立体的な遺影みたいにして貼り付い…

最近のあれこれ

どうもたぬ吉です、お久しぶりです。 今年に入ってからはずっと小説ばかり書いていまして、こちらのほうはずいぶんとサボり気味でした。特段書くようなこともないんですけど、気が向いたので雑記として更新します。 ────────── 【村田沙耶香さん】 かねてよ…

秀吉「敗者の行進」

秀吉の新曲がYouTubeにアップされていて、夜中なのに一気にテンションが上がった。 大好きなのに、最近全然聴いていなかった。 amazarashiにハマる前はずっと聴いていたはずなのに。彼らのこの感じ、すっかり忘れていた。バカだなぁ、自分。 秀吉「敗者の行…

【綿矢りさ】対極の同性愛「生のみ生のままで」

僕は書評が苦手だ。書評が苦手というよりも、何かを評するという行為そのものが苦手だ。それは要点をうまくまとめ上げ、かつ読み手にその対象に興味を持ってもらえるよう誘導するのが極端に下手ということでもある。 そもそも文章を書くこと自体嫌いじゃない…

存在を証明した文学フリマ東京

文学フリマを終えてしばらく気の抜けた生活を送っていました。いわゆる燃え尽き症候群というやつでしょうか。少しずつ回復してきたので、このあたりでブログを更新してみます。 僕は昨年の春、以下のようなことをブログに綴りました。 コミュニケーション不…

ヘルメットを、かぶせてあげよう

昨日の中央線下り、ほぼ終電に近い車内で、乗客同士のトラブルが目の前で始まった。ガラの悪い若い男ふたり(たぶん少し酔っている)に、眼鏡にマスクのまじめそうな男の子が執拗に絡まれるという構図。ふたりと言っても騒いでいるのは片方だけで、もう片方…

【追記】模倣から始め、半歩先をねらい独創を

昨日、一昨日と名古屋に行ってきました。目的はナイモンで知り合ったM君とのリアルで、彼とはけっこう長いことメッセ(途中からLINEを交換した)でやり取りしていたこともあり、お互いイメージどおり、すんなりと馴染むことができました。 なんだかすご…

【小説】タピオカ禁止法(最終回)

タピオカワールドが爆破される、死傷者50人以上か 東京タピオカワールドはたしか先週末、渋谷区に期間限定でオープンした謎のテーマパークだった。チケットは予約開始と同時に即完売で、オープン初日にはつい最近タピオカ大使に任命されたという人気タレント…

【小説】タピオカ禁止法(10)

またか、という気持ちになったのと同時に、ひょっとするとあの事件の犯人はSなのではないかという考えが頭をよぎった。しかし証拠はどこにもなかった。 それに、こんなに簡単に手に入る(信用できるかどうかも怪しい)情報の断片だけで容疑者が割り出せるの…

【小説】タピオカ禁止法(9)

三時になりました、ニュースをお伝えします。今日昼過ぎ、歩行者天国で賑わう東京・秋葉原の駅近くの路上で、男が通行人をトラックで撥ねたあと、次々にサバイバルナイフで切りつけました。東京消防庁によりますと十六人がケガをし、このうち五人が心肺停止…

【今村夏子】「こちらあみ子」の世界観と、認識しない力強さ

八月の十日を過ぎたあたりから、日中の空気がガラリと変わった。正確には季節の変わり目と言えるくらい、温度とか湿度が一気に変化した。こんなに早く秋の気配を感じたのははじめてかもしれない。 例年にくらべると、自分にとって今年の夏は出かける頻度が高…

【小説】タピオカ禁止法(8)

「T・A」の検索結果のタイムラインには、他にもこれと似たような動画が複数上がっていて、翌日にはネットニュースにも取り上げられるほどだった。 関連記事では聞いたこともないような名前のコラムニストが、「これは言わばルサンチマン。今までさんざんや…

【小説】タピオカ禁止法(7)

結局あの日、俺はタピオカを飲まずに店をあとにした。なにかの本質を垣間見たような気がして、タピオカへの興味が一気に薄れてしまったのだ。 あれから二週間、今はもうタピオカを飲んでみたいという気持ちはまったくない。だが、やはりほんのわずか関心は残…

【小説】タピオカ禁止法(6)

俺は何かを言おうとして、一歩足を踏み出そうとした。しかし俺より先に二人のもとに向かう白く太い足があった。さっきまでDKに嗤われていた、あのオタクの足だった。 「私もレジでここに並べって言われました。レシートなんて持ってませんけど」 怒り狂う…

【小説】タピオカ禁止法(5)

列はさらに前進した。中二階の踊り場から後方を見上げると、さっきよりも人が増えているのが分かる。二階に達した列はそのまま三階へと折れ曲がり、もうどこが最後尾なのか、ここから確認することはできない。 前に立つ五十絡みの夫婦も同じように首を動かし…

【小説】タピオカ禁止法(4)

あらためて前方の列に視線をやると、客もいろいろといるのが見てとれる。 五十絡みの中年夫婦、私服のJK二人組、身長差がすごい二十代のカップル、鞄にアニメのキャラクターを大量にぶら下げたオタクっぽいオバサン、専門学校生風の男子三人組、子ども連れ…

【小説】タピオカ禁止法(3)

翌日、仕事を終えた俺が向かった先は、H駅前に先々月オープンしたばかりの「Kong cha(コンチャ)」というタピオカ屋だった。 昼休みにスマホで〈H駅 タピオカ〉と検索をかけたところ、サジェストでこの店の名前がトップに表示されていた。なんでもここは今…

【小説】タピオカ禁止法(2)

「はー、おっかし。ないない、ありえない、ありえなりかずきだわ」 彼女はひとたびスイッチが入ってしまうと、独特の声と表情になる。たとえばそれはタレントのYOUだとかELTの持田香織あたりに似た、周囲を巻き込むような破壊力のある笑い方だった。 油断し…

犀の角のようにただ独り歩め

少し前の話になるけど、ブログトップに自身のメールアドレスを載せたところ、ほうぼうから興味深いメールが届くようになった。 人間関係の愚痴や相談のほかに、僕の記事への質問や感想など内容は大小さまざまで、いろんな意味でとても勉強になっている。ただ…

【小説】タピオカ禁止法

「先ほどお電話した滝岡といいますが」 「滝岡さん、滝岡さん、えーっと、下のお名前もよろしいですか?」 「滝岡浩志です」 「はい、はい、えーっと、午前中にお電話されて?」 「ええ、そうです、商品の取り置きをお願いしてたんですが」 「そうですねえ、…

「トリプル」は流行するか

日付が変わって木曜の夜、帰宅すると着替えもせずにベッドに倒れこんでしまい、目が覚めたら23時30分だった。家に着いたのが19時過ぎだから、正味四時間ほど死んだように眠っていたことになる。 深い睡眠だった。とくに普段から眠りが浅い自分にとって、これ…

ノースエで過呼吸起こして爆死

ズン。ズン。と脳に響く重低音がヤバイ。さながら埼京線の満員電車。中に入ってすぐわたるくんに会えた。今日もめちゃくちゃかっこいいなぁ。 「たぬ吉さん!?」 「やぁ、会えたねー」 「奥のほうすごいから行っておいでー^^」 って同時にぐーっと背中を…

読書とか音楽、最近のこと

GW中に円城塔の「文字渦」(川端康成文学賞・日本SF大賞受賞作)が読みたくて本屋さんまで行ったはいいけど、値段を見て買うのをやめた。めちゃくちゃ面白そうだけど二千円は出せない……。仕方なく図書館で予約したら10人待ちだった。順番が回ってくるまでた…

痛みをともなう恋愛改革

机に飲みかけの炭酸飲料があった。その横には、刺身に使っていた醤油のミニボトルも置いてある。近所のスーパーでは半額の時間になると鰤の刺身が200円で買えるから、このところそれを目当てにせっせと通っている。 食事が終わり、炭酸飲料と醤油をまとめて…

瞬間的⬛️ックスセンス

きのうの午後、市議会議員選挙の投票に行ってきました。 数日前から街のいたるところで「クリーンな政治を!」とか「まっとうな政治を!」なんて演説が聞こえていたけど、熱っぽく語られるほど胡散臭く感じるのは何故でしょうか。 今回は特に支持する政党も…

沈黙は敗北ではない

役所の紹介で不定期に通っていた就労アシストの事業所が、この三月をもって閉鎖することになった。 この一年を振り返ってみると、自分の精神状態はかなり不安定だったように思う。会話の途中で泣き出してしまうことが何度かあったし、体調が悪いときには険の…

【SF小説】誰もいない部屋で

部屋の天井の四隅を見ると金縛りにあう、という話を思い出し、さっきから白い天井を眺めているのだが、その四隅がいっこうに見あたらない。の、ではなく、正確にはどれが四隅にあたるのかが分からなかった。 別段この部屋がデザイナーズマンションの類いで、…

桜前線とあいみょん

木曜日、家に遊びに来たT君にとんでもなくおいしい手土産をいただいてしまった。立川にあるRINGOというお店のアップルパイだ。 雨よけのためか、紙袋は半透明の赤いビニール袋で丁寧に包まれていた。りんごみたいな真っ赤な包装がなかなかおしゃれで、(絶対…

渋谷区にて

【2018年2月13日】 夜の7時過ぎ、渋谷区内の某所で座っていたら、いかにもセンター街代表といった感じの強烈なギャル二人組がやって来た。 ギャルA「え、なにこれウケんだけど!聞き屋だって!」 ギャルB「なんかクマいるし、やばい!」 こんばんは~ A「お兄さ…