聞き屋のたぬ吉

矛盾の総和が人生だ

渋谷区にて

【2018年2月13日】

 

夜の7時過ぎ、渋谷区内の某所で座っていたら、いかにもセンター街代表といった感じの強烈なギャル二人組がやって来た。



ギャルA「え、なにこれウケんだけど!聞き屋だって!」

ギャルB「なんかクマいるし、やばい!」

 

 こんばんは~

 

A「お兄さんここで何してんですか?」

 

 いやぁ、お話を聞いてるんですよ

 

B「聞いてどーすんの!?」

 

 秘密を握って、後からユスるんですよ^^

 

A「何それ~超ウケんだけどぉ~!!」

B「うちら別に大した秘密ないよ(笑)」

 

 二人とも今日は買い物とかですか?

 

AB「えー、聞いちゃう?」

(見つめ合ってくすくす笑い出す二人)

 

 どうしたの^^

 

B「家出してんの(笑)」


 ありゃー、でも家出にしてはえらい荷物が少ないけど、着替えとかどうしてるの?

 

A「えー、そんなのけっこう何とかなるもんだよ」

 

 下着とか替えないと気持ち悪くない?

 

A「毎日なんか取り替えないよ~。ナプキンつけて一日、取って二日、ひっくり返してナプキンつけて三日、取って四日!ほらっ、四日持った!!」

 

 そんなんでいいんだ(笑)


B「てかその理屈だとさー、ナプキンだけ取り替えてれば永遠に履けんじゃん」

A「それなっ!ギャハハハ!!」

 

 洗濯しましょう^^

 

A「てかさーなんなの、このクマ!」

 

 こいつは僕の相棒ですよー

 IKEAでね、980円で売ってました

 

A「980円!やばー!!」

B「名前とかあんのー?」

 

 くまきちです

 

A「くまきち!ウケんだけどー!!」

B「えーじゃあこっちのアリクイは!?」

 

 こいつね、アナさんて言います

 

A「なんでアナさんなのー?」

 

 最初アナグマだと思ってたんだけど、名前つけてからアリクイだってことに気づいて、でも訂正するのも面倒だからアナさんのままっていう^^

 

B「なんだ~下ネタかと思ったら違った」

A「んなわけないじゃんバカじゃないの(笑)」

B「違うの聞いて!こないだミユのお店に新しい女の子入ってきたんだけど、なんて名前だと思う?アナミちゃんだよ!?それもうぶっちゃけ下ネタ狙ってるっしょってマネージャーに聞いたら、アナミは本人の希望だって言いはんの!絶対嘘だよね!?」

 

 なんか、いそうでいなそうだけどいそうで、でもやっぱりいなそうな名前ですね~

 

A「くどっ」

B「やばい、ウケる~!!」

 

 キャバクラの源氏名かなにかです?

 

A「あー、うーんまぁ」

B「べつに言っても平気じゃね?聞き屋だし」

A「だよね!実はうちら風俗で働いてて~」

 

 あ、そっちのほうでしたか!

 

B「お兄さん風俗とか行かなそー(笑)」

 

 行きませんねー

 

A「え、彼女いますー?」

 

 いると言えばいますけど、いないと言えばいないですねー

 

A「もー、くどいからー(笑)」

B「えなにそれ人妻と不倫とかそーゆう系?」

 

 惜しいー、ゲイなんですよー^^

 

A「えー嘘まじで!?じゃ彼氏ってこと!?」

B「てか全然惜しくないし!ギャハハ!!」

 

 これがそうでもなくて、場合によっちゃあ不倫よりタチが悪いんですよ

 

A「自分で言っちゃった!」

B「えなになに、どーゆうこと(笑)」

 

 奥さん子供いるの隠してて、捨てて来ちゃった!みたいなのが一番始末が悪いんです

 

A「あーあれだ!男に取られた男は」

B「戻ってこない!!」

 

 `^ω^

 

A「えでも好きになっちゃったんならいんじゃない?二人がよければ」

B「てかうちらいくつに見えます??」

 

 すみません、お後がよろしいようで……

 

AB「えっ?」

 

警察官「はいタバコ消して。君らいくつ?」

 

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気付いていた。

二人とも未成年ということも、同時に普段はもっと年上に見られていることも、そう見られたいと思っていることも、しかしそんな幼さを疑わず簡単に騙される大人たちこそもっとも嫌悪していることも、絶えず爆発したように笑っていないと自我を見失ってしまうことも、タバコを持った左手の内側の手首から第一関節にかけて夥しく整列した白線の死骸のことも、何もかも。

 

 

警察官は、ちゃんと気付けるのだろうか。

消えるコンビニの多様性

【2018年2月1日】

 

中堅コンビニチェーンのスリーエフが1月30日をもって全店舗の営業を終了した。昨年の春頃だったか、単独店舗消滅の一報を聞いたときはひどく憂鬱な気分になったものだ。

 

 

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僕の地元・神奈川発祥ということもあり、昔から何かと縁が深い店だった。90年代から放送されていた「星より明るくスリーエフ♪」のキャッチーなCMは今でも鮮明に覚えている。

 

 

youtu.be

 

思い返せば中学のとき、学校から一番近いコンビニがスリーエフで、放課後になると毎日のように通っていた。特に夏期限定のフローズンというシャーベットドリンクが好きで、炎天下の中をソーダ片手に家路につくのが日課だった。

 


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(甘くて冷たい夏の定番「フローズンラムネ」)

 

社会人になってからもたびたびお世話になった。今の相方と同棲をしていた頃、家の近所にセブンイレブンとスリーエフがあったんだけど、買いに行くのはいつも決まってスリーエフだった。

 

はっきり言ってお弁当類はイマイチなんだけど、それを補ってあまりあるのがその他の商品群だ。有名なのは「チキンの山賊焼き」や「もちぽにょ」あたりだけど、それだけじゃない。つまみ系の惣菜なんかも充実していたし、ブタメンやバラ売りのホームランバー、近頃じゃスーパーにも置いていないようなレトロな駄菓子などが普通に売っていて、大手のコンビニに比べて商品ラインナップの自由度が高いところがとても魅力的だった。

 


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(独特のスパイスが美味しい「山賊焼き」)

 


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(新しい味が続々登場した「もちぽにょ」)

 

他にも普通の肉まんがレジ横で売っているのに、惣菜パンのコーナーにも家で蒸かして食べる肉まんが堂々と並んでたり、冬なのにビーチボールや花火のセットが隅のほうでしれっと売ってたりして、やたらとマイペースなコンビニだなぁとほんわかしたのを覚えている。(オーナーによるのかも)

 

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関東圏ではセブン、ファミマ、ローソンと大手三社が凌ぎを削る中、その他のチェーンのシェアは右肩下がりの状況が続いている。今のところ都内で見られる主なコンビニというと、ミニストップサークルK、サンクス、コミュニティストア、デイリーヤマザキ、ポプラあたりだろうか。

 

地方だと、昨年六月にはココストアとエブリワンが全店舗の営業を終了して、それぞれ大手各社の傘下に入ったのは記憶に新しい。北関東をメインに展開中のセーブオンも次々とローソンに切り替える店舗が増えているらしい。

 


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2000年代より前のコンビニ市場はけっこう雑多な感じで、何となくごちゃごちゃしていた。アップルマートとかレインボーとか、全国区で全然聞いたこともないような名前のお店がたくさんあった気がする。

 


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首都圏でもampm新鮮組ホットスパーなど、コンビニの種類はもっとバラエティに富んでいたはずだったが、今ではもうミニストップすら珍しくなってしまっている。これから先、もうあの酒屋ともスーパーとも判別のできないような、変わった名前のコンビニを目にする機会がなくなると思うと、なんだかさびしい。

 

あっ、でも、アノ街のど真ん中にある某コンビニはかなりレアな名前だけど、昨年末に行ったときはそこだけ時が止まったように粛々と営業していた。新宿周辺で飲む機会がある人は、潰れないうちに一度冷やかしで訪れてみてはどうだろうか。

 


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(シャインマート 〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目13−6 03-3351-3434 )

 

※なぜかこのコンビニでは「香典袋」が異常に売れるらしい。

過去記事の掘り起こし

大した内容じゃないけれど、下書きに残っていた記事を再掲載してみました。この二つは過去に一度公開していたものです。

 

tanukichi.hatenadiary.com

 

tanukichi.hatenadiary.com

 

他にも公開せずに下書きになっていた記事が複数ありました。どれも短いものばかりですが、せっかくなので若干リライトして公開してみます。しばらくは過去記事が続くかもしれません。

 

車に無関心な「助手席性」の話

 

相方が車を買い換えるらしいです。

 

今彼が乗っている車種は日産のエルグランドなんですが、以前からずっと「燃費が悪い」とぼやいていました。ハイオク仕様だそうで、1リットルあたり5キロ走るとか走らないとか。今のところ同じ日産の新型セレナを検討しているそうです。

 

自分は車のことはさっぱりわからないので、へぇ、そうなんだ、くらいにしか思っていなかったんですが、調べてびっくり。街乗りの自動車でリッター5キロというのは相当燃費が悪い部類のようです。車種によって15~20キロ走るのもあるみたいなので、「お札を燃やして走っている」という彼の長年の嘆きが最近ようやく理解できました。

 

「なんでこれにしたの?」

「え、一度乗ってみたかったから」

「こんなに燃費悪いのに……?」

「うん、悪いのに^^」

 

エルグランドって車体がとっても大きいんですよね。そのぶんセダンとかに比べると座席の位置が高いから、たとえば高速道路で渋滞しても視界がふさがれる心配が無く、ある程度遠くまで見渡すことができるのです。

 

これがなかなかにストレスフリー。

 

それに何と言ってもこの車種の一番の売りは加速(馬力?)らしく、スピードが出せる道路での安定感が抜群で、乗り心地はすばらしく良いのです。

 

 


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男はハンドルを握ると性格が変わるなんて言いますが、うちの相方もご多分にもれず、たまにとんでもなく口が悪くなるときがあります。でもそのだいたいが、何に対してイライラしてるのかこちらはまったくわかりません。

 

「あっ、こいつ俺が出ようとしてるのにパッシングしてきやがった!」

(車の後を追うように突然加速)

「ちょっと、パッシングってなに?」

「ハイビームだよ!チカチカってやるやつ!!」

「え、なに、それの何がダメなの……?」

「くっそムカつくこいつ♯★※◎$¥■」

 

ドライバー同士なら常識なのかもしれないけど、自分は自動車の免許を持っていないので(医者に運転はやめたほうがいいと言われた)専門用語がまったくわかりません。むしろわからないから、余計に彼の言動を観察してしまうのでしょうね。なんというかそういうとき、自分たちってまったく違う生き物なんだなぁって、しみじみ思います。普段はとってもいい人なんですけど。

 

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車に限らず、とにかく相方は乗りもの全般が好きみたいです。暇さえあればYouTubeで電車とか飛行機の動画を見ていたりして、何が面白いんだろうって疑問に思うんですけど、そういう自分と全然違う部分にこそ価値があるのかもしれません。思えば過去に付き合った人たちは必ず車を運転していたし、僕の苦手な機械とかモノを組み立てるのが共通して得意だった気がします。

 

逆に料理に関しては「しない」のか「できない」のか、食に対する関心が低めで、たまに自炊をしたとしても肉を焼くだけとか、うどんを茹でるだけとか。そんなだから、こちらがハンバーグを作るだけで喜んでくれます。ざっくり言うとたまねぎを炒めて、それを挽き肉と一緒にこねて焼くだけなのに、彼らにとってはすごく面倒くさいことなんだとか。食器は洗ってくれるんですけどね。

 

自分では作らないのに手作りのものが大好きなのは、いつもごはんを誰かに作ってほしいっていう気持ちからくるらしく、つまりは結婚願望みたいなものらしいです。

 

 

着るものに関してもこだわりが全然ないみたいで、一緒に服を買いに行くと、こっちにしなよとか、それやめたほうがいいよとか、こちらがついアドバイスしてしまいます。自分は服がわりと好きで、通販サイトとかファッション雑誌とか何時間でも眺めていられるから、そのあたりの性格もまったく違うのでしょう。

 

上手く表現できないけれど、自分は相手のそういう大雑把なところに不思議と男らしさや魅力を感じたりするようです。ノンケっぽさって、こういう部分なのかもしれません。

 

 

こちらが得意なことは任せてもらって、むこうが得意なことにはできるだけ口をはさまないという、互いに足りないものを補い合うスタイルが年々確立されつつあります。なので出かけるときは「連れてってもらう」という助手席性を意識して、こちらは運転に関して極力無関心でいようと思います。

 

【小説】東京リアルボーイ

 

「食事のときからすでに前戯は始まっていると言いますが、あれもあながち間違いじゃありません。たとえば初対面の人と店で食事をする場合、テーブルを挟んで正面から向かい合うよりもカウンターなんかで横並びに座ったほうが親しくなりやすいんですね。私がそれを知ったのはそうですね、二十代も後半に差し掛かった頃だったかと思います。秋口でしたか、ちょっと時節もはっきりしませんがおそらく夏以降です。デートって言うほどでもないんです。いやなに、一つ年下の男の子と某出会い系アプリでリアルしたときのことなんですけどね、全然大した話じゃないんですよ。と言うか「リアル」なんてさらっと言われてもよく分からないですよね。いいんです、これ、いわゆる業界用語ですから知らなくて当然です。むしろ知ってたらそういうことになります。まあ何ですか、その、アレです、男女の世界で言うところのテレクラなんかで知り合って、やるかやらないかは置いといてひとまず会ってみませんか的な、アプローチ次第では二人の関係を一回きりにも十回きりにもできるような、ほどほど軽薄な初めましてです。それを男同士でお茶だのご飯だのってめいめい体裁整えてよろしくやってるってだけの話です。テレクラってたとえがそもそも古いですよね。ごめんなさい年がバレます。えー、つまり僕らにとってそういう便利で有名なアプリがあるんです。そうですね、ふつうの男性の場合ぎゃるるとかハッピーメールとか、ああいった類いのものをイメージしてもらって差し支えないかと存じます。出会い系からの初めまして、からの何やかんやあって、からのホニャララ的な、つまりそういった一連の可能性をすべて孕んだものの総称をリアルと呼んでます。リアル。そう、現実です。お互いがお互いのスペックを値踏みし合う、痛快で滑稽な現実です。どちらが主導権を握るかは賽を振ってみないと分かりません。とは言うものの、その実はっきりとした意味はあってないようなもんです。同じ仲間うちでいつの間にか共有されている、曖昧模糊とした記号みたいな言葉ですから。何だかこう説明すると真面目な人たちにぶん殴られそうなものですが、あくまでこれは私個人の見解ですので話半分に聞いておいてください。各人各様の解釈はあろうかと思いますが、大意としてはざっとこんなところでしょう」


「そういえば最近テレクラって言葉自体とんと聞かなくなりましたね。正式名称はテレフォン倶楽部です、テレント倶楽部じゃないですよ。え、いやね、九十年代後半にプリクラって流行ったじゃないですか。あれがプリント倶楽部の略称だったもんですからうちの祖母がそれと勘違いしてボケたんですよ。あのときは爆笑しましたね。ともあれ私も久々にこの四文字を口にしたような気がします。あれってまだ存在してるんでしょうか。気になりませんか。気になりますよね。今スマホで調べてるんですけど、そうですね、ちょっと待っててくださいね、えーと、あっ、あった、ありました、へぇー、池袋に日暮里に春日部に、って、これまた微妙な場所に残ってますね。いや、けしてツーショットダイヤルみたいな文化をバカにしてる訳じゃないですよ。だって当時はまだネットのネの字もありませんでしたからね。あれはあれで大人の出会い系ツールとしてそれなりに重宝されていたようですし。むしろそれがキッカケで生まれた子供だって世の中にはごまんといるんじゃないですか、親が言わないだけで。そう考えたらバカにできませんよ。簡易の見合い所と言いますか、もう立派な福祉です。リンリンハウスだのもしもし何だのってずいぶん流行ってましたからね。駅前も駅前におっきな電飾看板ペカペカいわして、それこそコンクリートのビルの壁から電話ボックス、はたまた繁華街のちょっと裏手に入ったところにあるような駐車場の金網のフェンスにまで大量にピンクチラシが貼ってあったりしました。名刺大くらいのサイズで、電話番号の下四桁が0930とかで「オクサマ」なんてルビ振って読ましてくるようなアレです。そんなもんがお札みたいにして街中のいたるところにぶわーって撒いてあったんですからすごい時代です。剥がしても剥がしても、どうせ安い紙なもんで上から貼られて重なって、ミノムシみたいになってる電柱そこらじゅうにいっぱいありましたからね。まるで悪霊退散、耳なし芳一かって話ですよ。青少年保護育成条例が聞いてあきれます。ともあれパラダイムシフトって言うんでしょうか、ここ数年で一気にエロに対して非寛容な世論が形成されましたから、そういう二〇〇〇年代初頭まで街角で当たり前に目にしていたようなバイオレンスな有象無象はすっかり鳴りを潜めましたね。で、今となってはあれです、ネットの世界の中でよりグロテスクなものへと変化して、それに相反するように暴力反対という暴力も際限なく拡大して、なにか事件が起こるたびにメディアがしゃしゃり出てきてその風向きを訳知り顔でまとめて牽強付会な説を撒き散らして飯を食うという、いよいよセコい時代になりました。コミック雑誌なんかいらないっていう内田裕也主演のガイキチ映画知ってますか。あれなんか芸能レポーターが首突っ込んだ取材しすぎて最後ヤクザに刺されますからね。今はそれが進化して、いや逆に退化したのかも分かりませんけど、個人がスマホのカメラ片手にクソみたいなメディアに成り代わってそこいらで刺し違えてるんですよ。何と言いますか、ある角度から捉えたときにどこかで一部の有害性が認められると、待ってましたとばかりに十把一絡げで悪と決めつけて叩く輩がいるでしょう。そういった人たちは風邪を引いたとき薬とか飲まないんでしょうか。あれだってそうです、作用と副作用を天秤にかけて作用が大きいとする場合に服用するんですからリスクがまったく無い訳じゃないんです。風俗だって何だかんだ性犯罪を減らす役割がありますし、そこんとこ清濁あわせ呑んでこその社会ってもんでしょう。要は向き合い方次第なわけです。アングラはアングラなりに需要と供給があって、その周辺で小さな世界が保たれているんです。全部を無くせばハイ平和って、そう単純な問題でもありません。きれい事がきれい過ぎてもはやフィクションの世界です。って、すいません愚痴が過ぎました。昔から初対面では政治宗教野球の話は三大タブーだと言われていますからね、ご気分悪くされませんでしたか。そうですかそれなら良かったです。今の話は完全に忘れてください、大変失礼いたしました」


「え、何ですか、待ち合わせ場所にいた相手の顔がアプリに載ってた画像の二割引きだったらどうするか、ですか。私なら全然笑顔で会えますね。二割なら想定の範囲内と言いますか、多少低めに見積もっておくのがダメージを軽減するコツです。私も人のこと言えるナリじゃありませんしね、そこはお互いさまです。じゃあ三割だったらどうか、ですか。まあ、ちょっと表情はカタくなるかもしれませんけど、それでも精一杯のつくり笑顔でがんばらさしてもらいます。とりあえず会います。いま、会いにゆきますって映画ありましたよね。知ってますか。いや知らないですよねいいんです大丈夫です。ふと思い出して言いたくなっただけです。話が飛んですみません。でも五割とかになっちゃうと、さすがに誰専と呼ばれた私も回れ右です。だって考えてみてください五割ですよ五割。半値。それってほぼほぼ別人じゃないですか。いわゆる詐欺画ですよ。あっ、詐欺画ってご存じないですか。有り体に言うと奇跡的に写りが良かった顔の画像のことです。研究に研究を重ねてミリ単位で照明調整して角度をまさぐって、そら今だ!ってな具合に地鶏した渾身の一枚ってわけです。あっ、もしかして漢字、間違っているだろうって思いましたね。それを言うなら自撮りだって。実はこれはこれで正解なんですね。なぜなら字面を意図的に変えることによって「私を見て」っていうナルシシズムが半減ないしきれいさっぱり消せるとでも思い込んでいるような頭の悪さを感じませんか。私は感じるんですよね。なのであえての地鶏です。地鶏棒なんてのもありましたけど棒々鶏かって話です、ぱっと見で。とまあそんなことはどうでもいいとして、とにかく五割引きはいけませんダメです、犯罪です。とうの本人は持ってけ泥棒くらいの気持ちで待ち合わせ場所にのこのことアホ面下げて現れるのかもしれませんけど、私に言わせれば相手のがよっぽど泥棒です、時間のね。こちとら朝帰りになるかもしれないくらいの期待と覚悟背負って会いに行くもんですから尚のことですよ。下手すりゃ仮病のひとつやふたつ使って翌日会社休んで夕方くらいまで空けるつもりでいますから気合いの入れ方が違います。舐めてもらっちゃ困るんですね。だからそういうときは私の時間を返せって心の底から叫んでやりたくなります。仮にですよ、仮にこちらが泥棒だとしでもスカンピン相手にするほど暇じゃないんです。いまどき空き巣だってターゲットの家に金目のものがあるかどうかうんと下調べしてから入るんですからね。適当に言い訳してドタバタキャンセルさしてもらいます。略さずに言ったのはただの気分ですのでお気になさらず。ただね、まかり間違っても両手にソフトクリーム持って立たせて、それがドロドロに溶けていくのを遠巻きにゲラゲラ笑って見ているような幼稚で悪趣味な真似は絶対にしません。こう見えて意外とモラリストなんですよ、私。というかさっそく学習能力がありません。またまた説明が抜けていました。「誰専」って何だって話ですよね。これは「だれせん」と読ませます。ってそうとしか読めないですよね、蛇足です。「誰でも専」の略称です。もはやその言葉を使ってる人間さえ〝専〟とつける意味がまったくもって分からないのですが、つまりぶら下げるものさえぶら下げていれば誰でもいいって人のことです。いやまあ、そうは言っても人間ですからね、限度ってもんはあります。さすがに残飯処理まではできません。単純にタイプが定まっていないだけであって、実際は誰でもいいわけじゃないんですね。こういうのを「選ぶ誰専」というみたいですが私はそれを自称しません。そう言ってやるのがなんだか悔しいんです。傷口に塩を塗る行為というか、性格が悪いのをみずから暴露しているみたいで嫌なんです。お前が選べる立場かよなんて弄られるのが目に見えていますからね。なので私に関してはさしあたり、タイプの広いフレキシブルな人間ということにしておいていただけませんか。いやはや、今日は序盤からだいぶ飛ばし気味です、本当すみません。それにさっきから臆面もなくいろいろ解説しちゃってますけど、万が一新宿二丁目なんかで耳にする機会があったらちゃんと知らないふりで通して下さいね。全部知ってますよって顔すると警戒されること請け合いなんで、それってどういう意味ですかってすっとぼけなきゃダメですよ。世の中っていうのはだいたい素人に優しいですからね。よろしくお願いしますね」


「さてと、話がだいぶそれました。それで、何でしたっけ、そうだ初対面、私のリアルの話でしたね。それじゃ、その話の続きからしましょうか」

 

 

 つづく